第10回「目からウロコがはぎ取れる! 経営に役立つ決算書の読み方」

「出張経理課長」布川昭文の「これでじゅうぶん! 社長の経理知識」

ウチの成績どうやってヨソと比較したらいいの? 【番外編】
社長なら絶対耳にしたくない言葉「倒産」について

こんにちは! エースラボの布川昭文です。

普段は「出張経理課長」として、契約企業様の日々の経理処理や毎月の状態把握に欠かせない月次試算表作成のお手伝い、さらには資金繰りや、資金調達に関わる支援業務を行っております。

これまでの経験をもとに数回にわたり、「経理業務に直接タッチしない社長さんでもここだけは知っておいてほしい」「ここを押さえておくと経営が楽になりますよ」というところをピックアップし、なるだけわかりやすく、簡略にお伝えしていきたいと思います。

今回は番外編として、「会社はどのようにして倒産してしまうか」について触れてみたいと思います。
私自身も以前在籍していた上場企業が「民事再生」を申請し、事実上の倒産という経験をして、とても辛い思いをしました。いまだに当時の夢を見て冷や汗をかくことがあります(笑)。

倒産の定義
帝国データバンクによると、倒産とは「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」と定義されています。具体的には、次の6つのケースに該当すると認められた場合が「倒産」となります。
①銀行停止処分を受ける、②代表が倒産を認めたとき、③裁判所に会社更生手続き開始を申請する、④裁判所に民事再生手続き開始を申請する、⑤裁判所に破産手続き開始を申請する、⑥裁判所に特別清算開始を申請する、となります。

なお、倒産には清算型と再建型の2種類があり、「破産」、「特別清算」、「大部分の任意整理」が清算型に属し、「会社更生法」、「民事再生法」、「一部の任意整理」が再建型に属します。

倒産するケース
まず、どの様なケースが倒産に多いかを記したいと思います。第一には、手元資金の重要性を軽んじてしまい、資金が底をついてしまうケースです。
第二が売上至上主義から粉飾決算に走り経営破綻するケース。
第三には、市場の変化に対応出来ずに倒産に至るケース。
あとは組織の内部問題などの経営サイドの問題で倒産するケースや、過度の借入による負債増による倒産。しかしなんといっても、資金がショートしてしまうことによる倒産が一番ではないでしょうか。東京商工リサーチによると2019年から2021年に倒産した企業のうち、倒産直前の決算が黒字だった割合は約4割〜5割にものぼることが分かっています。黒字でも、資金管理が出来ていなければ企業を継続することは難しいのです。

倒産から復活
一方で倒産と聞くとそこで全てが終わってしまうという印象を持たれる方が多いと思います。しかし、倒産=直ちに企業生命が終わってしまう、ということではありません。一度倒産をしてから復活を成し遂げた企業もあります。

例えば日本の航空会社のスカイマークも復活した企業の一つです。同社は1996年11月にスカイマークエアラインズ株式会社として設立され、2000年5月には東証マザーズ上場をしますが、厳しい経営状況が続きます。2004年には新たな増資を受け、息を吹き返しますが、格安航空会社の参入が相次ぎ、対抗策として打ち出した長距離国際線参入や大型豪華飛行機導入が裏目に出てしまい、資金繰りが急激に悪化します。様々な手を尽くして金策に走り債権を目指しますが、2015年1月に資金がショートするタイミングで民事再生の申請を行い、事実上の倒産となりました。
その後、ANAホールディングス支援の再生計画案が可決されて、経営が再建され現在に至っており、2022年12月に東証グロースに上場しています。
スカイマークのように、一度はダメになった状況から再浮上するといったケースも少なからず存在します。このような企業からは様々な教訓を学ぶことができます。
借入依存の危険性
次に、倒産の可能性がある企業の決算書の特徴をいくつか記したいと思います。東京商工リサーチのレポートによると、2022年に倒産した企業の特徴の一つとして借入金の依存度が上昇している事が読み取れます。利用する指標としては「有利子負債構成比率(有利子負債÷総資本)」になります。この指標は企業の借入金への依存度を表しています。

倒産企業は、前々期63.5%→前期65.5%→最新期69.3%と上昇傾向にありました。一方、生存企業では前々期28.2%→前期29.5%→最新期29.8%で推移しています。ここから読み取れることは、経営不振の企業ほど借入依存度が高まっているということです。やはり身の丈以上の負債を抱え込んでしまうと危険だということが読み取ることができると思います。また、2022年に倒産した企業(383社)のうち、債務超過は258社で約7割に達しており、自己資本比率が10%未満の会社は60社あり、債務超過と合わせると8割超になります。財務状況が疲弊して倒産に追い込まれたと読み取ることができます。

私自身も民事再生申請の直前は、資金繰り表の作成や口座振替、資金集中業務に追われて疲弊しておりました。入金後すかさず口座振替を行って、他社への支払を行う。毎日これの繰り返し…。本当にぐったりしました。企業にとって重要なのは、利益よりも資金であるということを嫌というほど痛感しました。

ほかの注意する指標
もうひとつ注目しておきたい指標として「営業利益支払利息率(支払利息割引料÷営業利益)」があります。東京商工リサーチのレポートでは、2022年倒産企業とコロナ禍前の2019年倒産企業で比較すると、2019年は前々期から最新期では横這いで推移したのに対して、2022年倒産企業では、前々期73.3%→前期137.1%→最新期165.5%と上昇しており、前々期からの比較で2.2倍の増加をしたことが読み取れます。
コロナ禍の業績悪化が顕著に現れた結果となっております。一方の生存企業では、前々期55.3%から前期69.9%に増加はしたものの、最新期では61.0%に減少しており、業績回復が進んだことが読み取れます。

さて、いかがでしたでしょうか。
会社が倒産すると取引先、従業員、金融機関などに様々な影響が生じます。それも悪い影響ばかりが生じてしまいます。自社の取引している会社も突然倒産してしまったら大変ですよね。例えば取引先が粉飾決算を行っていたら…。そのようなケースを見抜くポイントを次に記したいと思います。

粉飾決算を見抜く方法
帝国データバンクによると2022年に粉飾決算により倒産した企業は300件と過去最高を数えたとのことです。上場企業などは会計のプロ集団の監査法人の監査を受けていても見抜けない不正を行って決算書を良く見せるケースがあり、中々見抜くことは難しいと言われております。下記に不正を見抜く一般的な手法や注意点を記したいと思います。
①財務諸表の分析:財務諸表を分析し、異常なパターンや不自然な数字を探します。急激な収益や利益の増加などは注意が必要です。
②比較分析:同業他社や過去の同社の財務データと比較することで、異常な数字やパターンを発見しやすくなります。
③経営分析から読み解く:主な会計指標(利益率、負債比率、流動比率など)を計算して、基準値と比較を行います。異常に高い利益率や低い負債比率などは注意が必要です。
しかしながら、これらの手法や注意点はあくまで一般的なガイドラインであり、完全に見抜く方法ではないことを理解してください。

粉飾を行い倒産した企業の事例
次に、実際に粉飾決算を行って倒産した企業の事例について触れたいと思います。この会社は半導体製造装置メーカーの上場企業で、118億の売上高のうち、3億円が実際の売上で97%が架空売上の水増計上であったとのことです。損益計算書上はきれいに見せていますが、キャッシュフロー計算書上では、営業キャッシュフローが35億円のマイナスとなっておりました。前年も同様に営業キャッシュフローは39億円のマイナスです。売上高が118億円も計上されているのに、キャッシュフローが2期連続で大幅にマイナスになるということはやはり不自然でしかないですね。この異常な状況は、バランスシートからも読み取れます。売掛金が228億円計上されていますが、これは売上高の2倍近い金額で、回収まで2年近く要することが読み取れます(売上債権月商比:228億÷(118億÷12)≒23ヶ月)。通常の回収期間は2〜3ヶ月なので、ここでも異常な状況を読み取ることができます。
損益計算書は綺麗に偽装出来ても、架空売り上げの歪がキャッシュフロー計算書やバランスシートに表れております。
因みに、この会社の社長と専務は金融商品取引法で逮捕され、有罪判決を受けております。完全に悪意があったと認識されたのかと思います。

黒字倒産の事例
もうひとつ、倒産するケースの黒字倒産の事例について触れたいと思います。黒字倒産の典型的事例として東証1部企業であった会社の倒産を記したいと思います。
この会社は、倒産事業年度まで、5年程度経常利益、当期純利益ともに黒字で推移しておりました。一方でキャッシュフロー計算書に目を移してみると、営業キャッシュフローはずっとマイナスの状態で、最終年度に至っては△100,000百万円というとんでもない数字になっておりました…。なぜこのような状況になったかを当時の有価証券報告書を参照すると、「棚卸資産の取得に138,065百万円支出した」とあります。沢山仕入れを行ったが、売れない状況に陥って、過剰在庫になり慢性的な資金不足に陥っていく…。黒字ではあるので、金融機関からの融資は受けられたが、過剰在庫が資金化されずに、有利子負債の返済に窮してしまい、最後は新たな融資を受けることも出来ずに手詰まりで倒産。拡大路線に舵を切りすぎて、仕入を継続してしまったことによる資金ショート。これは、どんなに利益が出ていても資金が底をつけば終わってしまうという黒字倒産の典型的な事例です。適正な在庫管理がとても重要であるということを再認識して頂ければと思います。

今回はここまで。次回をお楽しみに。

ABOUT US
布川 昭文
中央大学経済学部卒業後、東証一部上場企業の建設会社に入社。支店経理、本社人事部で勤務。その後、会計事務所、シンクタンクにてスタッフ系業務全般及び調査・研究業務に携わる。シンクタンク時代には流通業の経理担当者向けのセミナー講師を定期的に務めた。また、2005年共著にて「経営計画・利益計画の立て方進め方(ISBN-10:4534039751)」執筆。 2021年 エースラボの理念「中小企業のパワーアシスト」に共感し参画。いままで様々な企業の業務改善に携わる。趣味で合唱をたしなみ、ベートーヴェンの第九をこよなく愛する。週末、ぶらぶらとドライブしながらの温泉巡りをすることもすき。