よく「日本の生産性は低い」と言われます
国の生産性というのはざっくり言うと、GDP(国全体の付加価値)を人数や時間で割った 単位あたりの生産量のことだそうです
ちなみに日本生産性本部の調査から、日本の労働生産性を見てみると 2024年の1時間あたり生産性は5,379円 1人あたりで見ると877万円
OECD(経済協力開発機構)に参加する先進国38カ国中で それぞれ29位と32位という残念な結果です
いやしくもGDP第4位の経済大国 日本に住まう者としては「こんなにランクが低いなんて なんか 数字のからくりでもあるんじゃないの?」と言いたくなるところですが G7だと揺るぎない万年最下位であることもふくめ 事実として低いというのは認めざるを得えないようです
私は日本の生産性が低いのは 日本が誇る「おもてなしの心」といいますか 「職人気質」といいますか はっきり言ってしまえば 「こだわりすぎ」 もっとはっきり言ってしまえば「過剰品質」に原因があるように思えます
私の本籍地である 電気設備業界でも 日本製の製品は「期待寿命10年」とうたっていれば 大抵15年は使えますしね
最近 新書界でスマッシュヒットとなった齋藤ジンさんの「世界秩序が変わるとき」(文藝春秋社 1,050円)のなかにも
「君の国のホテルに行けばわかる。到着するなり、6人もの従業員がバーッと出てきて鞄を持ってくれたり、エレベーターを開けて待ってくれていたりする。あの料金でこんなサービスを提供していてるから生産性が低いんだ」
という米FRB高官の過去の発言が記されています。
「過去」とわざわざ断ったのは 実はそうは言っても2018年を底に 日本の生産性は上がってきており 少しずつではありますが改善の兆しが見えるからなんです
齋藤ジンさんによれば 日本の生産性を下げているのは 全雇用の7割を占める サービス業(≒中小企業)だそうですが ここの分野でも確かに改善の兆しが見て取れます
高級ホテルのことは存じ上げませんが 私が利用する ビジネスホテルやそれに毛が生えた程度のホテルでは 自動チェックイン機が備えられ ほとんど従業員の方とお話をしなくてもチェックインできますし
高級店のことは存じ上げませんが おなじく私が利用するコンビニでは レジに行く私を察して 店員がすっ飛んでくるようなことはなく 黙々と品出しをしていますので 私はもっぱらセルフレジを利用しています
そういえば清楚な女性店員さんが 両手で包み込むようにおつりを渡してくれたのは 遠い昔のこと・・・あれは幻だったのでしょうか?
と言うわけで 齋藤ジンさんが指摘する 「団塊世代の生産年齢人口からの退場」ばかりでなく 日本全体でこれまでやり過ぎだった 品質の過剰な作り込みが少しずつ是正されいるのかも知れませんね
これで日本の生産性がグングン上がり 結果私たちもその果実を享受できるようになる それだったら大変めでたい話なんですが 私にはちょっと引っかかっているところがあります
それは過剰品質をやめ 生産性向上を目指した私たちが あまりにもマジメにそれに取り組みすぎていること なんです
たしかにホテルの従業員は お客が来ようがなんだろうがフロントでパソコンとにらめっこ コンビニ店員も「ありがとうございました」も言わずおにぎりを棚に並べています
居酒屋の店員さんも 「ご注文はアプリで」って言うなりテーブルから去って 壁際で配膳のために待機しています
驚くほどの変わりっぷりなんですが 私の目にはどうも「お客を無視して自分の仕事をする=生産性アップ」という公式に 自分を無理やりマジメに当てはめている
つまり「(人間らしい)サービスをしない ということを一生懸命マジメにやっている」 ように見えてならないのです
どうも 人間が楽しくやるべきことを機械にやらして 機械でもいいことを人間が不機嫌にやっているような・・・
これ 方向性 まちがってませんか?
なんかこのまんま この「生産性向上」にマジメにまい進していってもあんまり良い結果になりそうにもない気がします
もう少し肩の力をぬいて いらっしゃるお客様に笑顔で接したり 走ってこなくてもいいから お客のためにレジに入ったり 一部の注文はお客の代わりに アプリで発注してあげたりできないものでしょうか?
じっさい 私が時々行くコンビニのラテン系とおぼしき店員さんは 私がレジにいるのをみつけると 体格のせいもあってか ゆっくりではありますが レジに歩いてきて けっして手際は良くありませんが笑顔でレジ対応してくれます
あんまり「海外では」って言うのも良くないかも知れませんが・・・
最近行ったドイツの小さなホテルでは 受付は普段着の女性二人しかいませんでしたし 対応も至れり尽くせりではありませんでしたが とてもフレンドリーな対応のおかげで気持ちよく過ごすことができました
その後寄ったパリでも ドラッグストアで 同行していた老婦人の為にファンデーションを買ったのですが 店員さんはいくつか見本を出してくれて肌の色に合うものを見つけるまで きちんと付き合ってくれました
そうそう 一杯1,000円もしないワインのために 3銘柄テイスティングさせてくれたバルもありました
これらの私の小さな体験から思うことは 我々より生産性が高いとされているG7の彼らは お客様に喜んでいただく「人間らしい」仕事は自分たちが楽しくやり そうでないことはなるだけ合理化している と言うことなのです
私はどんな業種であれ どんな販売経路であれ 付加価値は私たちの商品・サービスがお客様の手に渡ったときに生まれるものだと思います
お客様のために使う時間を減らして 合理化されてない業務に使う時間を増やして向上した私たちの生産性は はたして今後肝心の付加価値を増やしていくことになるのでしょうか?
日本がこの方向性をまちがった生産性向上にマジメに取り組みすぎて お客様に姿を見せない「自動販売機の中に人が入っている」ような国になってしまい いつの間にかインバウンドも来なくなくなってしまわないよう
もうちょっと不まじめに(?)楽しく 生産性アップに取り組むことを提唱したいですね
と 思っちゃったんだからしょうがない
☆ちなみ私たちエースラボが取り組む生産性アップは 徹底的にプロセスを見える化し プロセスを合理化し ムダな業務を減らすことで 働いている方がお客様のために使える時間を増やし 結果有効なサービスの量=お客様からいただける売上・利益 を増やすことに主眼を置いています 私の提唱を具体的に御社に生かしてみたい方は ぜひ問い合わせフォームから連絡を!