利益が出る はじめの一歩 §2「見える化された業務を整理」

1)赤ちゃんマニュアル育成法

さて 前回の第1章「見える化」

あなたの業務の「赤ちゃんマニュアル」が無事に生まれましたね

まずは おめでとうございます

でも 生まれたばかりの赤ちゃんは 

まだ自分一人では何もできませんよね

会社に利益をもたらす「戦力」になるには 

ここから育てていく必要があります

今回は この「赤ちゃんマニュアル」を実用レベルへ

そして より大きな利益が出るレベルへと育成していく

そんなお話です

私が長年の経験を通じて学んできた 

最も効率的な「マニュアル育成法」 

その具体的なやり方をお伝えしていきますね

2)歪んだ鏡を直す 〜現状の整理〜

まず最初に

なぜ「整理」しなければいけないのか

ここから始めましょう

みなさんは毎朝 洗面台や化粧台の鏡を見て 身だしなみを整えますよね

もし 鏡がなかったらどうでしょう

自分の目で直接 自分の顔を見ることはできませんから

髪がはねているのか 顔色が悪いのか さっぱりわかりません

やっぱり「見える化」って大事ですね

さて 前回作ったマニュアルによって

あなたの会社の業務は一応「見える化」されました

しかし ここで注意が必要です

今できあがったマニュアルは 残念ながら「正確な鏡」ではありません

例えるなら 遊園地にある「ビックリハウス」の鏡

人間というのは不思議なもので 

自分が重要だと思っている仕事や 

自分が関心のある作業ほど 

無意識にボリュームを多く書いてしまうんです

自分の鼻に関心がある人が自画像を描くと 

鼻だけが巨大に描かれてしまうように

あるいは 虫眼鏡で細部ばかりを見すぎて 全体像が見えておらず 

極端な話 耳が手から生えているような

そんな奇妙な「業務の自画像」になっている可能性が高いんです

これを 目・鼻・口は ちゃんと顔の中に収める 

指は ちゃんと手から生えているように直す

そして 肩→肘→手首 というように 正しい順番につながるように整えていく

これが「整理」という作業です

この整理作業には 「ディレクトリ構造」という考え方が役に立ちます

(Geminiの描いたイラスト)

実際に整理するときは こんなふうに書く必要はありません

Excelやスプレッドシート 

あるいは Wordの「アウトライン」Googleドキュメントの「番号付きリスト」を使って

左側から右側に行くにつれて だんだんと具体性が上がっていくように並べ替えるだけです

たとえば

「顔」という大項目の下に「目・鼻・口」があり

「目」という中項目の下に「眼球・まつ毛」がある

もし「鼻毛」が 顔の表面に飛び出していたら 

それはちょっと変ですよね

ちゃんと「鼻」の中の要素として格納してあげる

こうしてきれいに整えて 磨き上げていくことで初めて 

あなたの業務の「本当の姿」が客観的に見えてくるようになります

歪んだ鏡のままでは 正しいお化粧も 身だしなみも整えられませんからね

3)「移動」は仕事を生まない 〜ムダの発見〜

鏡が正しく映るようになったら 次はいよいよ実践です

鏡を見て アホ毛が立っていたら直す

ヒゲの剃り残しがあったら剃る

女性なら メイクのバランスを整える

業務でいうと

「あれ これやらなくてもいい作業じゃない 」

「2箇所で別々にやってるけど 1つにまとめられるんじゃない 」

そんな「ムダ」が見えてきます

工場などの現場だとわかりやすいのですが 

オフィスワークだと 意外とこれが埋もれているんです

ちょっと想像してみてください 

夕食の後片付けのシーンです

ご飯茶碗と お味噌汁のお椀と お箸 これらを洗って棚にしまうとします

もし ご飯茶碗は 脚立を使わないと届かない高い棚へ 

お味噌汁のお椀は 冷蔵庫の隣にある一番下の引き出しへ 

そしてお箸は 隣の部屋の勉強机の引き出しへ

そんなルールで片付けている人がいたら どう思いますか

「いやいや そんな無駄な動きしないでしょ 」

と笑うかもしれません

でも 実はみなさんの業務の中で 

これと同じようなことが起きているんです

あっちの棚へ書類を取りに行き

こっちのプリンターへ走り

またあっちの席へハンコをもらいに行く

この「移動している時間」 実は 何も価値を生んでいません

1円の利益も生まないんです

工場ではこれを「運搬のムダ」「動作のムダ」と言ったりしますが

オフィスでも同じこと

物理的な移動距離をなくす あるいは 

車での移動をリモート会議にするだけで 劇的な時間の節約になります

コスト削減というと お金のことばかり考えがちですが

「時間コスト」の削減こそが 経営において最もインパクトがあるんです

4)「手段」が「目的」になっていないか

ムダを削るためには 

「そもそも これは何のためにあるのか 」

という本質を理解する必要があります

よく「手段の目的化」と言われますよね

最初は何かを成し遂げるための手段だったはずなのに

いつの間にか それをやること自体が目的になってしまう

私が過去に見聞きした事例で こんなことがありました

ある会社には3人の偉い役員さんがいて 

担当の社員は その3人それぞれに 

別々の形式で会議資料を作っていたんです

A常務には この閉じ方で

B専務には この順番で

C社長には 文字を大きくして

これは 本当に必要な仕事でしょうか

3人に 同じ事実に基づいた同じ資料を見せて 

同じ土俵で判断してもらったほうが

よっぽど話が早いし 経営判断のズレもなくなります

お互いに別々の資料を見て 別々の解釈をして 会議でぶつかり合う

そんな無駄な時間はもったいないですよね

私の家内の話になりますが 

昔 ある証券会社の「秘書課」にいたことがありました

そこでの一番重要な仕事は

役員たちが飲むお茶の好み

読む新聞の銘柄

出かけるときに使う社用車の車種

これらを完璧に把握して 

好みに合わせて提供することだったそうです

まあ 役員の方々にとっては 

気分良く仕事ができる素晴らしい環境だったのでしょう

しかし 会社がその後どうなったかというと 

残念ながら消滅してしまいました

極端な例かもしれませんが

「上司の機嫌をとるための資料作り」とか

慣例だから続けているだけの日報」とか

会社の利益や生産性に直結しない仕事が 

「重要業務」のような顔をして居座っていないでしょうか

歯ブラシは歯を磨くためのもの 

鼻の穴を掃除するためのものではありません

道具も業務も 本来の機能と目的を見失ってはいけないんです

5)魔法のフレームワーク「ECRS」

では 具体的にどうやって業務を整えていくか

ここで 製造業の改善手法として有名な

「ECRS(イクルス)」という考え方をご紹介しましょう

これは

Eliminate(なくせないか)

Combine(一緒にできないか)

Rearrange(入れ替えできないか)

Simplify(簡素化できないか)

の頭文字をとったものです

Eliminate(なくせないか)

まず一番効果が大きいのがこれです

「そもそも やめられないか 」

有名な「世界の山ちゃん」の話をご存知ですか 

名古屋の手羽先の名店です

社長の山本さんは もともと「風来坊」という別のお店で修行をされていました

そこで学んだ手羽先を自分の店で出すときに

あえて「やめた」ことがあるんです

それは「二度揚げ」です

本家では カリッとさせるために二度揚げをしていましたが 山ちゃんでは

「一度揚げでも美味しくする方法」を工夫することで 

調理時間を短縮し アルバイトの手間を減らしました

その分 安く早く提供できる

さらに 空いた余力で居酒屋メニューを充実させ 

幅広いお客さんに愛されるお店へと成長したそうです

業務でいえば タイムカードの集計作業などがそうですね

いまどき 手書きや打刻のカードを

月末に総務が回収して Excelに手入力する

これを スマホの勤怠アプリに変えるだけで

データは自動でCSV出力されます

「入力する」という作業そのものが

この世から消えてなくなるわけです

Combine(一緒にできないか)

次は「結合」です

リンスインシャンプーのような発想ですね

シャンプーして流して リンスして流して

この2回の工程を1回にする

業務なら

見積書と受注伝票の統合はどうでしょう

見積書データを作ったら

受注が決まった瞬間に ボタンひとつで受注伝票や請求書に変わる

一度入力したデータを使い回せば

転記ミスもなくなりますし 作業時間は半分以下になります

Rearrange(入れ替えできないか)

これは 手順や場所の入れ替えです

私は料理が好きなのですが

以前は 魚の煮付けを作るとき

水・酒・醤油・みりん 全部混ぜて煮ていました

でも今は

まず酒と水とみりんで煮て

魚に火が通ってから 最後に醤油を入れるように変えました

手順を変えただけですが

身はふわっとして硬くならず

みりんの甘味も生きて 醤油の香りも立つ

品質(付加価値)がグッと上がったんです

仕事でも同じです

夜遅くに 疲れた頭でダラダラやっていた会議を

朝一番に入れ替えてみる

頭がスッキリしている朝なら

短時間で建設的な議論ができますし

「よし 今日一日これをやろう 」とアクションにもつながります

残業代も減って 一石二鳥ですよね

Simplify(簡素化できないか)

最後は なくせなくても もっと簡単にできないか

例えば年賀状

最近は「虚礼廃止」でやめる企業も増えましたし

LINEやメールで済ませることも多くなりました

これも立派な簡素化です

社内の備品発注なんかもそうです

「ティッシュがなくなったら総務に言う」

という曖昧なルールだと

言い忘れたり 特定の誰かの負担になります

これを「カンバン方式」にするんです

ティッシュの在庫が残り5個になったら

そこに挟んである「発注カード」を

担当者のトレイに入れる

カードを受け取った人は

何も考えずに機械的に発注すればいい

これなら 誰でもできますし

在庫切れの心配もなくなります

6)ボトルネックを解消する「分業」の技

もうひとつ重要なのが

仕事の滞り いわゆるボトルネックの解消です

特定の部署や 特定のベテラン社員しかできない仕事があり

そこで全てが止まってしまう

例えば経理業務

たった一人の担当者が 仕訳から決算まですべて抱え込んでいて

3月の決算結果が出るのが なんと5月中旬

なんてこと ありませんか

これでは経営者は

2ヶ月間も目隠しをして運転しているようなものです

5月になってから「前期は赤字でした」と言われても

もう何の対策も打てません

これを解消するのが「分業」です

分業には3つの型があります

1つ目は「リレー型」

工程を区切って AさんからBさん Cさんへとバトンをつなぐやり方

ただし バトンの受け渡し(つなぎ目)には注意が必要です

2つ目は「ピールオフ(皮むき)型」

コア業務以外を 外へ切り出すやり方です

給与計算や記帳入力などを

アウトソーシングやパートさんに任せることで

社員は判断業務に集中できます

3つ目は「アドオン(上乗せ)型」

ここぞという重要な場面だけ

スキルを持った上司や専門家が乗っかるやり方

商談のクロージングだけ上司が同行すれば

何回も通うより早く決まり 結果的に効率が上がります

ちなみに当社では

これらの分業を徹底することで

お正月明けには その期の着地見込みがほぼ見えています

だからこそ 4月1日の決起大会では

「今期はこうするぞ 」という明確な方針を

全社員に向けて発表できるんです

7)空いた時間は何に使うか

さて ここまでやって業務が効率化されました

社員の残業も減りました

めでたしめでたし

……ではありません

ここで終わっては ただの「ラクな会社」です

効率化して空いた時間

これを何に使うかが 利益の分かれ目です

答えはひとつ

「お客様のために使う時間」です

お客様のことを考えたり

お客様のために実際に手を動かす時間を増やす

これが付加価値を生みます

簡単な計算をしてみましょう

あるレストランで

注文から料理が出るまで1時間かかる店と

5分で出せる店があったとします

もし1時間かかるなら

食べる時間30分を足して 1回転90分

ここから生まれる売上は1000円です

もし5分で出せるなら

食べる時間30分を足して 1回転35分

同じ90分の間に 2回転 いや3回転近くできます

つまり

同じ人数 同じ席数で

3倍の価値(売上)を生み出せる可能性があるということです

社員が汗水たらして 非効率な作業を黙々とこなしている

それを見て「うちの社員は頑張り屋だ」と満足してはいけません

その頑張りが

本当にお客様の価値につながっているのか

利益につながっているのか

仕組みが悪くて利益が出ないのを

社員の努力不足のせいにしてはいけません

それは 経営者の怠慢であり「罪」だと

私は常々考えています

いかがでしたでしょうか

今回は 業務マニュアルをベースにした

「見える化」と「整理」の具体的な手法をお伝えしました

自分の会社の業務が

歪んだ鏡になっていないか

ぜひ一度 点検してみてください

さて次回は

もっと成果を出すための核心に迫ります

「そもそも うちは何屋なのか 」

「我が社の本当の強みとは何なのか 」

これをはっきりさせることが

利益への最短ルートになります

次回もどうぞお楽しみに

§2 今回のまとめ

最後に 今日のポイントを整理しておきましょう

1)マニュアルは「整える」ことで鏡になる 書き出しただけの「赤ちゃんマニュアル」は まだ歪んだ鏡です ディレクトリ構造を使って整理し 「あるべき場所に あるべき業務がある」状態に整えましょう 正しい鏡があって初めて 本当のムダ(寝癖や剃り残し)が見えてきます

2)魔法の合言葉「ECRS」 業務の整理・断捨離には 製造業の知恵を借りましょう ・Eliminate(なくせないか) ・Combine(一緒にできないか) ・Rearrange(入れ替えできないか) ・Simplify(簡素化できないか) この4つの視点で 「手段の目的化」を防ぎます

3)効率化のゴールは「お客様」 業務を効率化するのは 単に社員がラクをするためではありません 空いた時間を「お客様のために使う時間」に変えるためです 同じ時間で どれだけ多くの付加価値を生み出せるか それが利益体質への第一歩です

次回は §3「自社の強み・何屋なのか」をお届けします 自社の本当の価値を見つける「宝探し」の旅に出かけましょう どうぞお楽しみに

以上最後までお読みいただきありがとうございました