今回はエースレター紙版での最後のメッセージとして、かつてお話したとても大切なこと(https://www.ace-labo.net/2019/03/13/6130/)をもう一度言うよ、という内容です。
「事業と経営? 一緒じゃないの?」と思われる方もいると思います。
もちろん一般的に事業と経営はおんなじような文脈で使われていることが多いのは、私とて承知しています
それでもやはり私は、事業と経営の違いをしっかり分けて考えることが重要ではないかと思います。
事業と経営、この2つの言葉に対する私の解釈はこうです。
事業は「企業が顧客に対して具体的に行っているサービス」
経営は「企業が事業を継続的に行うためのスキル」
こう考えてみると日本の社長の多くは(中小企業だけではありません)事業家としては一流ですが、経営者としてはどうかな〜と、いうか経営にあんまり力を使っていない印象があります。
もちろん成長の過程で経営者としての側面を身につけるケースはありますが、一般的に経営というと、スキルと言うよりなにか「哲学」「心がまえ」みたいなものをイメージされている方が多いように感じます。
もちろんスキルの背景に哲学や心がまえは必要なんですけれど、それでも私は経営は「スキル」だと固く信じています。
だって念力じゃあるまいし、心がまえだけあって腕を組んでいれば、なにかが起こると思います?(あ これは「念ずれば花開く」とか無責任なこと言っている人への明確な皮肉です。)
電気設備設置販売・プログラミング教室・印刷業・家具インテリア販売・アパレル製造販売・パン工房・ベビー用品製造販売・空調資材製造・弁護士事務所・不動産業・建設機械リース・自動車用品卸・司法書士事務所・水処理プラントメーカー・物流業・食品市場・ネイルサロン・機械工具卸。
一見なんの脈略もなく並べたように見える事業の数々 これは一体何かというと、私たちエースラボがお手伝いしている顧客のみなさまの業種を契約日付順に並べたものです。
(一応正確性を期すために言っておくと、最初の2つはもともと私がやってた事業でエースラボの正体はその2業種の企画室です。また後ろの方の3社ほどは、間もなく顧客になって頂く予定のところです。)
私は、もともと経営していた電気設備設置販売の事業についてはそこそこくわしい(あたりまえ!)ですし、重量物搬送を伴う施工作業も老体にむち打てば、まだそれなりにできると思います。
プログラミングだって、ほんとに初歩のところまでなら教えられるはずです(ホントか?)
しかし、印刷機のインクの調合だとか、ダイニングテーブルの天板の材質だとか、女性服の号数だとか、パンのメニュー開発だとか、ベビーベッドのサイズとか、ダクトの風量計算だとか、民事訴訟法になにが書いてあるだとかについては、全く知見がありません。
つまり、私たちエースラボは顧客企業の事業そのものに対しては大して知らない、と言い切って良いでしょう。
それでも不思議なことに2019年のコンサルタント開始以来、解約となった事例は、たった1件(4年継続いただいた上で2024年5月卒業)だけです。
一旦契約を結んだら二度とは解約できない、悪夢(!)のようなコンサル契約もあると聞きますが、エースラボが顧客と交わす契約書には、双方いずれかが解約を希望した場合、その翌月には契約が終了できる旨が明記していますので、そんなこともないと思います。
やはりここは素直に、顧客から「エースラボは役に立つ」と思っていただけている、ということで受け止めて良いんではないかなと・・・
私たちエースラボが顧客のお役に立ち続けられている理由を、私はこんなふうに考えています。
繰り返しになりますが、エースラボの契約先の多様な事業の数々。
その事業ごとに、その道のプロだけがもつスキルやノウハウがあります。
なかには論理では説明できないようなひらめきが必要な事業があったり、言葉にできない、体で覚えるしかない技能もあると思います。
総務省の日本標準産業分類は、細分類になると1400以上に分かれるそうですが、それぞれの事業にそれぞれにやはり独自のスキル・ノウハウがあるんじゃないかと思います。
しかし、エースラボは1400以上あるどの業種からご依頼があっても、コンサルタント契約を受けることができると思います。
だって、どんな事業でも、どんな理念をお持ちの企業でも、経営上のスキル・ノウハウはおんなじだから。
せっかくなのでお読みいただいている皆様に、どんな事業でも通用する経営上のスキル・ノウハウを要約してお伝えすると・・・
「社員・顧客・社会などの利害関係者から一定の共感を得られるビジョンのもとに、(それぞれの)事業を効率的で継続的に行える仕組みを作って、それを回しながら価値を産んで皆さんに還元する。これを改善しながらずーっと続けていく。」
ただ、それだけのことです。 簡単でしょ?
だから私にも経営ができていて、そのコンサルタントもできているわけ。
経営は誰でもできることなんですが、事業と比べるとドラマがなくて退屈で、アクティブな事業家の皆さんがすぐ飽きてしまうので、私たちみたいな第三者が客観的にお手伝いをする必要があるんです。
例えて言えば、スポーツのトレーナーに似ているかもしれません。
ゴルフ、マラソン、サッカー、野球などなどスポーツにもいろいろ種類があって、そのスキルやノウハウはさまざま。
コーチもそれぞれのスポーツの専属であることが普通だと思います(野球のピッチングコーチがマラソン選手を指導したりはしませんよね)
しかしどの種目もスポーツである以上、「選手の体が重要」という一点だけは共通しています。
ですから体づくりとメンテナンスの専門家であるスポーツトレーナーは、相手の選手の種目がなんであれ、だいたい対応できてしまう。
そして体づくりのトレーニングはとても重要なのに、単調で退屈で苦しい。
イチローのように一部の超人的に我慢強い選手以外はなかなか一人で体づくりを継続できません。
それでたいていのプロスポーツ選手は、その種目の専門のコーチ以外に、体づくりのためにスポーツトレーナーと契約している。
あの大谷選手もトレーナーがいますが、そのトレーナーは大谷のバッティングそのものに対してはくちだししてないはずです(それはバッティングコーチの仕事)。
きっと私たちエースラボも、顧客から見てそんな存在なんじゃないかと思います。
顧客の個々の事業については、顧客がもともと持つスキル・ノウハウをしっかり生かしてもらう(顧客によっては事業に対する専門のコンサルタントが別にいる場合もあります)。
しかし、事業の成長に欠かせないが、単調で退屈な体づくりである経営については私たちエースラボがしっかりサポートする。
なので、私たちエースラボはどんな業種の会社でもサポートができる。
そして、一旦契約いただいたら長くサポートを続けていくことになる。
卑近な例ではありますが、これらの事実こそが、私が言っている「事業と経営は同じではない」の証明になるのではないかと思います。
事業と経営の違いについてドラッカーは自嘲気味にこう語っています。
「皆さんに秘密をお知らせしましょう。取引を成立させるというのは労働に勝ります。
取引は刺激的で面白く、労働は卑しい事です。どんな経営であれそれを経営するという事は、そもそも膨大な量の細かい仕事の積み重ねです
・・・取引はセクシーでロマンティックです。これこそ無意味な取引が繰り返されてきた理由なのです。」
(バフェットからの手紙 著者: ローレンス・A・カニンガムよりの引用)
そうなりますと、エースラボは「セクシーでロマンティック」じゃない方の担当、つまり「じゃないほうコンサルタント」であると言うこともできますね(笑)。
いずれにせよ「事業」と「経営」を分けて考えることが、非常に大切だと私は思っているのです。