前回は「エースのDX」のための「エースのDX勝利の方程式」6つのステップから1)業務全体の流れの見える化 についてお話しましたね。
その続編ということで今回は、2)業務の流れの課題発見と解決策の立案、についてお話していきましょう・・・などと、いきなり本題に入りますと・・
「業務の流れの見える化」とか「課題発見」とか、DXに直接関係あるんですか?
どうしてDXに最適なソフトや機器構成の話に入らないんですか?
あれ? もしかして沢田さんってITにあんまり詳しくないんじゃないですか??
なんて疑問に思われちゃうかもしれませんね。
でもね、私はエースのDXを実現するためにはどうしてもこの辺の手順をおろそかにはできない、と考えているんです。
DXとIT(インフォメーションテクノロジー;情報技術)は決してイコールではありません。
DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、「デジタル化を通じて業務などの効率を劇的に上げること、つまり革新すること」ですよね。
エースのDXはさらにこれに一歩踏み込むというか、絞り込むというか
「業務全体の流れを最適かつ最速にアップグレードしていくことによって、企業の成果を最大にする」
こと、と定義しています。
ITはあくまで、(エースの)DXを実現するための「手段」だと思うんですよ。
ここの目的と手段という関係性を一緒にしてしまうと、課題の多いままの業務をITで高速化しただけのいわゆる「なんちゃってDX」になってしまいませんか?
もちろん「なんちゃってDX」だってそれはそれで何らかの効果はありますよ。
課題、つまりムダが多くたって高速にはなりますからね。
エクセルに詳しいスタッフが作ったものの、その人以外はだれも使いこなせない、独特で複雑極まりない構造のエクセルシート(その人がいなくなると産業遺跡化)も
「文系管理職なのに~シュシュッと作れちゃう俺~」が、自分の都合で作った極めて部分最適化された「(画期的な)業務アプリ」 も
ないよりはあったほうが全然マシで、効果がないとは言い切れないでしょう。
でもそれって、水漏れを起こしているボートに、タライでたまった水を汲み出しながら乗っているようなものですよね。
手のひらじゃなくてタライがあるだけまし、というわけです。
でもそんなことに労力を費やすよりも、早く河岸に戻って水漏れしないボートに乗り換えるほうがよほど楽しくて生産的なんじゃないでしょうか? というのが私、ひいてはエースのDXの主張というわけなんです。
以上 ITという手段を考える前に、その目的をはっきりさせることがエースのDXではとても大切、ということを説明させていただきました。
じゃ「2)業務の流れの課題発見と解決策の立案」について始めさせていただきますね。
前回「1)業務全体の流れの見える化」で申し上げた、けっこう手間のかかる
①「業務内」の各作業のやり方と手順
②「業務間」の受け渡し方法
の解明が終わり、業務全体の流れの見える化が完成したら、次にその業務全体の流れの中に潜む課題を見つけ出し、解決策を考えていく手順に移ります。
この課題というものを、私たちエースラボが実際に業務支援させていただいている方にお聞きすると、
「人手が足りない」とか「熟練度が低い」という「人」の問題としてとらえられていることがあります。
(誰それさんが仕事できない、とか「人」よりもっと絞り込まれた「個人」を問題視している人もいます)
「熟練度の高い人手を増やす」ことで業務全体の流れを解決することは、当然可能です。
ただしそれは「低コストで有能な人材をいくらでも補充できる」のでしたら、という大変厳しい条件付きです。
まあ実際にはそんな条件に当てはまる会社はありませんから、このままではせっかく業務全体の流れの課題を見つけても「解決は不可能」ということになってしまいます。
(会社の中でお互いが「人が足りない」「あいつはダメ」とか不平不満をいだきながらも、解決に手を付けられずに、ストレスだけがどんどんたまっていく、というような環境は、こういった認識が作り出してるのかもしれません。)
もしお読みの皆さんの感覚もいまそんな感じなら、私が皆さんに考えていただきたいのは、
「人の問題が課題」という考えは、野球の指導者が「ヒットが打てないことが課題」と考えているようなものじゃないですか?
「ヒットが打てないこと」はあくまでも結果であって、課題ではないんじゃないですか?
ということです。
もし「人の問題」が課題ではなく結果なんだとしたら、結果を管理してもなんら問題は解決されないわけです。
じゃあ何が真の課題かというと、課題はその会社の業務全体の流れ方(プロセス)そのもののはずなんです。
業務全体の流れ方(プロセス)が良ければ、人の業務品質に多少のばらつきがあっても、問題なく業務は流れていくはずです。
ですから経営者はその結果、つまり人的問題の出ているところに急行して、その奥底に潜む「業務の流れ方」の課題を見つけなければならない、というワケ。
ここまでご納得いただけましたら、いよいよ「業務の流れ方」の代表的な課題を発見・解決する手順のについて説明申し上げます。
まず最初に前回1)の手順で出来上がった業務全体が見える化されたシートを見ながら、「時間がかかりすぎている業務工程」がないか確認します。
こういった部分のことをプロジェクト管理の世界では一般的に「ボトルネック」と呼んでいます。
知っている方も多いと思いますが、「ボトルネック」は日本語にすれば「ビンの首」、ペットボトルの胴体がキュッと細くなって、出口に向かう所のことです。
あれ、何のために細くなっているかご存知ですか?
答えは簡単で「一度にドバッと出てこないように」です。
(砂時計のくびれのところも同じ目的ですね)
お茶や、ワインや、醤油は確かに少しずつ出て欲しいのですが、直接であれ間接であれ、何らかの価値を生産している業務はむしろ少しずつ流れてもらっては困りますよね。
だからボトルネックとなった工程は、理想的な業務の流れかたにとっては解決すべき課題なんです。
さあ、見える化シートからボトルネックを見つけ出すことができたら、いよいよ解決案の検討です。
ここまでやって初めて、課題を解決する方法を考えることが大切で、片っ端から目についた課題を解決しても意味がないどころか、有害な時もあるのです。
その理由を前回と同様、和菓子屋さんの例で考えてみましょう。
たとえば、1時間に2kg分のお餅をつくことができる「餅つき工程」があったとします。
ここに社長さんが新しい機械を入れて1時間に10kgのお餅をつけるようになったとします。
何と生産性が5倍になったわけで、社長バンザーイと叫びたいところですね。
でもそのつぎのお餅を丸めてあんこをつめる「あんこ入れ工程」が1時間に3kgのお餅しか処理できないとしたら「餅つき工程」とあんこ入れ工程の間には1時間あたり7kgのおもちの在庫「仕掛品」ができてしまう計算になります。
せっかく社長が大金をかけたからと、フルパワーでお餅をつき続けると、丸めることもあんこを入れることもできない、かっちかちのお餅が量産されてしまいます。
結局そうならないために1時間10kgの能力を3kgに落として使うことになってしまいます。
これは極端な例ですが、せっかくお金をかけて機械を入れても、改善個所を間違うと大きな害(コストアップ)が発生することもあるわけなんです。
こんなことにならないためにも、見える化されたシートから、ボトルネックつまり真の課題になっている場所を慎重に見つけ出すことが重要になるわけです。
望むべくは、ボトルネックをなくして、業務全体の流れを作って、なるだけ少ない材料や手間、つまり「資源」で、短時間でドバッと価値が作られて欲しいのです。
さて次は、いよいよお待ちかね「3)企業文化・風土に合わせたツール(主にソフト部分)の選択」についてお話を続けていこうと思ったのですが・・・・なんとなんと!
前回同様、ここで時間と気力が尽きてしまいました。
この続きは、次号のエースレターでゆっくりとお話させていただきますので、どうぞお楽しみに! ということでまた来月!
4月もみなさまに、さらに良いことがありますように。