利益が出る はじめの一歩 §3「自社の強み・何屋なのか」

前回は 業務の「見える化」と「整理」についてお話ししました

無駄を削ぎ落とし マニュアルが整備されてくると 会社としての「基礎体力」がついてきます

さて 今回は そこからさらに利益を生み出すための核心 「強み」についてのお話です

よく経営の世界では 「SWOT分析」なんて言葉を聞きますよね

強み(Strength) 

弱み(Weakness) 

機会(Opportunity)

脅威(Threat)

これらを分析して 自分たちの力を最適化しようという考え方です

教科書的には 「弱みを克服して 強みを伸ばそう」 なんて言われることが多いですが

私は こう考えています

「弱みを克服しようとすると 強みの切れ味が悪くなる」

1)「オールラウンダー」は売れない

みなさんの周りにもいませんか 「なんでもそつなくこなす便利な人」

確かに便利です でも それだけなんです

一方で アイドルや芸能人を見てください 

ものすごく歌が下手だったり 運動神経が壊滅的だったり 

あるいは ちょっと天然だったり

そういう「弱み」や「欠点」があるからこそ ファンは応援したくなるし 

その人の「強み」がより際立って見えるんです

もし彼らが 死に物狂いで弱点を克服して 

歌もダンスもトークも 全部平均点の

「優等生」になったらどうでしょう

おそらく 売れなくなります 

魅力のフック(気になるところ)がなくなってしまうからです

会社も同じです 

弱みを消して まん丸の円(オールラウンダー)を目指してはいけません 

どこかが尖っていて どこかが凹んでいる 

その「尖っている部分」こそが あなたの会社の存在価値なんです

2)「強み」の勘違い

じゃあ 自分の会社の強みってなんでしょう

「そんなの 自分が一番よく知ってるよ」 

「うちは素早い対応が強みだ」

「うちは技術力が強みだ」

そうおっしゃる経営者の方は多いですが ここには大きな落とし穴があります

「あなたが強みだと思っていることは 実はただの努力賞かもしれない」

これ 私自身も経験があるんですが 

人間というのは 自分が苦手で ものすごい努力をして克服したことを 

「自分の強みだ」と勘違いしやすいんです

元々苦手だったことを 人並み あるいは人並み以上にできるようになった 

その努力は素晴らしいですが それはあくまで

「補正された弱点」であって 他を圧倒する「真の強み」ではありません

本当の強みとは 

「あなたが何もしなくても 息をするように当たり前にできてしまうこと」 

これです

野球で言えば 努力してようやく長打が出るようになった人より 

多少当たりが悪くても いつでも俊足を飛ばしてシングルヒットを量産できる 

なぜなら努力して手に入れた長打力はいつ失われてしまうか分かりませんが

持って生まれた俊足は 手入れさえおこたならければ いつでも発揮できます

それが「才能」であり「強み」です

鏡を見ずに自分の顔がわからないのと同じで 

自分たちの本当の強みは 自分たちではなかなか見えないものなんです

3)答えはお客様が持っている

では どうすれば本当の強みが見つかるのか 答えは簡単です

「人に聞く」

これに尽きます

お客様 取引先 あるいは社員 特に お金を払ってくださっているお客様に こう聞いてみてください

「数ある会社の中で どうしてうちを選んでくれたんですか?」

この答えの中にしか 真実はあません

実は私 昔 電気設備の工事会社を経営していた頃 これをお客様に聞いて回ったことがあるんです

私はてっきり 「対応が早いから」とか 「親切だから」と言われると期待していました

ところが 返ってきた答えは 衝撃的なものでした

「沢田さんとこは高いけど 安心だからだよ」

第一声の「高いけど」を聞いたとき私は背筋が凍りました 

「うわ 高いと思われてたのか 値下げしなきゃ見捨てられる」 

一瞬 そう思いました

でも お客様はこう続けたんです

「オタクに頼むと 一度言えば完璧にやってくれる 現場で細かい管理もしなくていいし 手直しもない 

私の手間が一切かからないんだよ だから 結果的に安いんだ」

目から鱗でした 

私がコンプレックスに思っていた「価格の高さ」は 

「圧倒的な品質と安心感」という強みの裏返しだったんです

ここから私は腹を括りました 「よし うちは品質で勝負する」

見積もりで安値勝負になったら 「どうぞ他社さんへ」と あえて降りるようにしました 

その代わり 打ち合わせの密度 施工の精度 納期の遵守 そして請求書の正確さに至るまで 

徹底的に「品質」を磨き上げました

その結果 何が起きたか ?

「安さだけ」を求めるお客様はいなくなり 

「品質」を求める良いお客様だけが残りました

無駄な相見積もりの時間がなくなり 利益率は上がり 

現場の社員も 誇りを持って仕事ができるようになったんです

4)「安くて良いもの」はこの世にない

もしあの時 お客様に

「オタクは仕事は雑だけど 安いから使ってるんだよ」 と言われていたら 

私は迷わず「激安」に特化していたでしょう 

徹底的にコストを削り 薄利多売の王者を目指していたはずです

重要なのは 「品質が良いこと」だけが正義ではないということです

スピードかもしれない 

メンテナンスの良さかもしれない 

あるいは「名物社長のキャラクター」かもしれない

大切なのは 「うちは何屋なのか」 これをはっきりさせることです

よく 「品質も最高で 価格も最安値を目指します」 という経営者がいますが 

残念ながら それは不可能です

品質と価格は「トレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)」の関係にあります

縦軸に品質 横軸に安さを取ったグラフを想像してください 

両方が満点の地点には 物理的に到達できません

「粋な人には律儀な人はいない」 

なんて言葉が寄席芸の世界にもありますが 

両方を追い求めると 結局 どっちつかずの「中途半端な店」になります

飲食店で 「味はそこそこで 値段もそこそこ」 

というお店が 一番経営が苦しいのと同じです

5)決断の時

自社の強みを知るということは 

「何をやらないか」を決めることでもあります

私の場合は 「安売り」を捨てました

その代わり 「品質」という一点において 

誰にも負けない努力と仕組み作りをしました

さあ あなたの会社の強みはなんでしょう 

あなたの会社は 一体「何屋」なんでしょう

机の上で腕組みをして考えていても分かりません 

ぜひ明日 勇気を出して お客様に聞いてみてください

「なんでうちを選んでくれたんですか?」

その言葉の中に 次のステージへ進むための 「宝の地図」が隠されているはずです

次回は こうして見つけた「強み」を 

具体的にどうやって利益に変えていくのか 

その仕組みづくりについてお話ししたいと思います

どうぞお楽しみに

§3 今回のまとめ

最後に 今日のポイントを整理しておきましょう

1)「オールラウンダー」は選ばれない 弱みをすべて克服して「平均点」を目指すのはやめましょう 凹んでいる部分(弱み)があるからこそ 尖っている部分(強み)が輝きます お客様は「便利な人」ではなく「魅力的な人」のファンになるのです

2)強みの答え合わせは「お客様」とする 自分たちが思っている強みは ただの「努力賞」に過ぎないことが多いもの 本当の強みは 息をするように当たり前にできていることの中にあります 「なぜ 数ある中からうちを選んでくれたのですか 」 この問いかけの中にだけ 真実の答えがあります

3)「安くて良いもの」という幻想を捨てる 「品質も最高で 価格も最安」という店はこの世に存在しません 品質と安さはトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)の関係 勇気を持って「何をやらないか」を決めること それが「うちは何屋なのか」を定義する第一歩です

次回は §4「強みを利益に変える『トレードオフ』の法則」をお届けします

今回見つけた強みを どうやって具体的な戦略と利益に変えていくのか

さらに深く掘り下げていきましょう

どうぞお楽しみに