前回 第3章では 「本当の強みはお客様が知っている」 というお話をしました
勇気を出して聞いてみましたか 「どうしてうちを選んでくれたんですか 」と
さて そこからが本番です お客様の声から見つかった「強み」 これをどうやって 会社の「利益」に変えていくのか
今回は 経営において最も重要で かつ 多くの人が陥りがちな「罠」についてお話しします
1)「安くて良いもの」を目指してはいけない
もしあの時 私がお客様から 「沢田さんとこは 仕事はそこそこだけど とにかく安いから頼んでるんだよ」 と言われていたら
私は迷わず 「激安」に全振りしていたと思います
品質なんて二の次にして どうやったら1円でも安く仕入れられるか どうやったら手抜き……いや 効率よく作業を終わらせられるか そこに全勢力を注いでいたでしょう
なぜなら それが「お客様が求めている価値」だからです
しかし 実際は 「高いけど 安心だから頼む」でした だから私は「品質」に全振りしました
ここで大事なのは 「どっちつかず」が一番危険だ ということです
よく 真面目な経営者ほど 「品質も最高にして 価格も地域最安値を目指します」 なんてことを言ってしまいます
気持ちはわかります でも これは不可能です もっと言えば これをやろうとすると会社は潰れます
なぜか?
「品質」と「安さ」は トレードオフ(あちら立てればこちら立たず)の関係にあるからです
2)「45度の位置」は地獄の入り口
ちょっと頭の中で グラフを描いてみてください
縦軸に「品質」 横軸に「安さ」をとります
品質を上げれば上げるほど コストがかかるので 安さは下がります
逆に 安さを追求すればするほど 品質は下がります
この両方のマックス(満点)を結んだ線 扇形のような 4分の1の円弧(カーブ)をイメージしてください
私たちのビジネスは どんなに頑張っても この「カーブの上」までしか行けません カーブの外側にある「最高品質で 激安」という夢の場所には 物理的に到達できないんです

一番怖いのは このグラフの真ん中 角度でいうと「45度」の位置です
「品質もそこそこ良くて 値段もそこそこ安い」
一見 バランスが良くて 一番効率が良さそうに見えますよね 飲食店で言えば 「味は70点 値段も70点」みたいな店です
でも ビジネスの世界では このポジションが一番 経営が苦しいんです なぜなら 特徴がないから
「今日は贅沢して美味しいものを食べたい」というお客様は 高級店に行きます 「今日は金欠だから安く済ませたい」というお客様は 激安チェーンに行きます
真ん中の店は 誰の「一番」にもなれないんです
日本の芸能の世界(講談や落語)でも 「粋な人に 律儀な人はいない」 なんて言葉があります
粋(かっこいい)で かつ律儀(真面目)な人はいない どちらかを立てれば どちらかが立たない それが世の理(ことわり)です
だからこそ 決めなきゃいけないんです
右に行くのか 左に行くのか
品質で行くのか 安さで行くのか
この「決断」こそが 利益の源泉になります
3)「あの人じゃないとできない」をなくす
さて 進むべき方向(強み)が決まったら 次にもう一つ やらなきゃいけないことがあります
それは 「強みのマニュアル化」です
例えば お客様から 「お宅のAさんの納品対応は 本当に素晴らしいね」 と褒められたとします
ここで 「いやあ Aさんは優秀ですからね 鼻が高いです」 で終わらせてはいけません
Aさんがやっているその「素晴らしい対応」 具体的に何をしているのか どんな言葉を使っているのか どんなタイミングで連絡しているのか
これを徹底的に分析して 分解して 「誰でもできる形(マニュアル)」に落とし込むんです
そうしないと 「Aさんはできるけど Bさんはできない」 「Aさんが辞めたら あの強みは消えてしまった」 ということになります
これでは 会社の強みではなく ただの「個人の技」です
Aさんが持っているノウハウを 会社全体の共有財産にする
そうすれば 新人さんが入ってきても ベテランのAさんに近い品質が出せるようになります
先ほどの私の会社の例で言えば 「お客様の手間をとらせない 安心な対応」
これを 特定の担当者だけでなく 全社員ができるように 徹底的に仕組み化しました
請求書の出し方ひとつ 電話の受け答えひとつ すべてを「安心品質」に統一したんです
そうすると 何が起きるか 会社全体の「基礎点」が上がります
誰が担当しても お客様に 「そうそう これこれ やっぱりエースラボさんは安心だね」 と言っていただける
これがブランドになり 他社との差別化になり 最終的に「利益」となって返ってくるんです
4)まとめ
強みを利益に変えるステップは シンプルです
1.お客様に聞いて「強み」を見つける(第3章)
2.その強みに「全振り」する(トレードオフを恐れない)
3.その強みを「マニュアル化」して 全員ができるようにする
「安くて良いもの」なんていう 存在しない青い鳥を追いかけるのはやめましょう あなたの会社が生きる道は あなたが決めた「強み」の先にしかありません
さて ここまでで マニュアルを作り 強みを磨いてきました
次回は 少し視点を変えて もっと根本的な 「社長としての時間の使い方」や「経営者の役割」について お話ししていきたいと思います
どうぞお楽しみに
§4 今回のまとめ
最後に 今日のポイントを整理しておきましょう
1)「45度の位置」は地獄の入り口 「品質もそこそこ 値段もそこそこ」 このポジションが一番危険です 右(品質)に行くのか 左(安さ)に行くのか 中途半端を捨てて どちらかに振り切る決断が 利益の源泉になります
2)無いものねだりをやめる 「最高品質で 激安」という領域は 物理的に存在しません この幻想(青い鳥)を追いかけるのはやめましょう トレードオフの法則を理解し 自分たちが決めた「強み」だけを 徹底的に磨き上げることこそが 生存戦略です
3)「個人の芸」を「組織の技」へ 特定の社員しかできない「良い仕事」は 会社の強みではありません 「なぜあの人はできるのか」を分析し マニュアルに落とし込みましょう 誰がやっても同じ「高い品質」が出せるようになった時 それは初めて 他社が真似できない「ブランド」になります
次回は §5「社長の時間の使い方」をお届けします 仕組みができたあと 経営者はその空いた時間をどう使うべきか さらなる高みへ登るためのマインドセットをお話しします どうぞお楽しみに


