【ラボ これも読んでおこう】_5 資本主義が人類最大の発明である ヨハン・ノルベリ著 山形浩生訳 ニュースピックス

なんとなく触れにくい言葉「資本主義」

皆さん「資本主義」って言葉にどんなイメージをお持ちですか?

私の主観ですが、あんまり良いイメージをお持ちの方はいらっしゃらない気がします。

なんとなく清潔感に欠け、後ろ暗いと言いますか・・・

道の真ん中で「資本主義バンザイ!」なんて叫んでしまったら、後ろからアタマをハリセンで思いっきりひっぱたかれそうなイメージといいますか・・・

ここにバンザイって言っている人がいます

そんな資本主義を真正面から「人類最高の発明」と言い切っている本が出ました。

それこそ今回ご紹介するヨハン・ノルベリ著の「資本主義が人類最大の発明である」という本でさらに「グローバル化と自由市場が私たちを救う理由」という副題がついています。

ちなみに資本主義ってなんだっけ?

ということでさっそくGoogleの生成AI Gemini君に聞いてみたところ

「資本主義は、私有財産制、自由な経済活動、そして市場メカニズムを基盤とする経済システムです。」という答えが返ってきました。

沢田元一郎ことジェミニチロウ流に再解釈すると

「私有財産を資本として使って、自由にビジネスをし、市場メカニズムのルールに従った競争をすることを良しとする主義主張」

ということでしょうか。

資本主義が世界を救ってきた?

著書の中でノルベリ氏は、「資本主義は貧困を減らし、人類の寿命を延ばし、教育水準を向上させてきた」と主張しています。

そして、それを統計的なデータや歴史上の証拠で説明していきます。

例えば貧困に関しては

1981年に40%だった極貧率は、グローバル化と自由市場の浸透によって、2000年には29%に減少し、2022年には8%まで激減。

極貧と言える人は世界中で100人に一人になったと述べています。

現在貧困の中心もいえるアフリカ大陸でも、自由市場を受け入れたボツワナは1960年から世界平均の10倍以上成長を遂げ、悲惨な内乱状態から自由市場になったルワンダはひとりあたりGDPを、ここ20年で2.57倍にした、と個別の事例も挙げています。

反グローバル主義反対

その上で彼は、自由市場経済の制限や反グローバル化は決して人類に恩恵をもたらさない、と断言しています。

かれは一杯のコーヒーが互いのことを知らない無数の人々の協力で成り立っているとし、資本主義は肌の色も、価値観も気にしないから、この協力が成り立つとしています。

また過去にアメリカ南部で人種差別法が生まれたのは、強欲な資本家が肌の色を気にせず、黒人差別を拒否したために、差別主義者が人種差別法を生み出した、とも主張しています。

中国の勃興についての見解

ここ数十年成長が続く、非資本主義の中国については、その成長は鄧小平時代から始まる「草の根資本主義」のおかげで、それを中国政府が追認したのだとしています。

また、世代が変わって中国の体制が毛沢東時代の中央統制に戻ったためにその成長は鈍化。

「中国が自由主義を打倒したいなら、中国は自由になるしかない」とまで断言しています。

環境問題はどうするの?

この問題は、貧困、健康、教育よりは新しい問題のせいか、ここについては彼は断言を避けているように見えます。

地球温暖化などの環境問題は、難題であることは認めつつ、目先の環境問題の解決は長い目で見ると有害であるとし、炭素税など「環境に値段をつけること」が解決の糸口になるのではないかとノルベリ氏は述べています。

沢田ジェミニチロウはどう思う?

私はこの本を読んで、ノルベリ氏の主張には一定の科学的根拠があり納得できる、という立場です。

ただ、感覚的に若干違和感を感じるところもあり、気持ち距離を置きながら、もう少し様子を見たいな、というところでしょうか。

国際社会は現在反グローバルの気運が高まっており、イギリスのEU脱退から始まり、ヨーロッパでの移民反対運動、またアメリカのトランプ新大統領も保護主義色の強い政策を実行しそうです。

資本主義の壮大な実験が始まるこの時期に、なかなか良いタイミングで出版されたのではないかと思います(何目線?)。

リベラルってなんだ?

一見新自由主義者のように見える彼は自分自身を「古典的リベラル」と評しており、日本で今「リベラル」を自称する左派寄りの人が聞いたら怒髪天を衝くことになるのではと感じました。

私は「人間は基本善良であるから、邪悪を防ぐ程度、最低限のルールのある自由が一番」と思う人が左右問わずリベラリストではないかと考えています(もちろん自分もリベラリストの一派だと認識しております)

やっぱ運用かな?

彼も作中で述べていますが、資本主義はポピュリズムに堕しやすく、また社会主義はたちまち個人崇拝の権威主義に姿を変えてしまいます。

(個人的には、投票や株価でやり直しのきく資本主義の方がまだいいと思いますけどね。)

冒頭に書きました、資本主義という言葉のもついかがわしさは、資本主義そのものではなく人の持つ心の善悪が乱反射することから生まれるのではないかと、我ながらうまいこと言って終わります。

300ページのなかなか読み応えのある本ですが、ぜひご一読をオススメします。

☆ イーロン・マスクさんの推薦文で逆に読者が減ってしまいそうで心配です(笑)