No.01_中小企業にもCXO(最高〇〇責任者)が必要なわけ 「オーナー社長の分身 完コピ不能説」

経営者の方からいただく名刺に たまに「代表取締役CEO」と書かれていることがあります いうまでもなくCEOはチーフ・エクゼクティブ・オフィサーの略で「最高経営責任者」

ちなみに会長も社長もCEOも日本の会社法で定められている役職ではなく 言ってしまえば通称なので どう名乗っても構いません

会社法では会社の代表たるものは「代表取締役」ですからその下の呼び名は何でもいいわけです もしそうしたければ「代表取締役将軍」と名乗っても「代表取締役下足番」と名乗っても良いわけ

ま それは冗談として 中小中堅企業の代表取締役はオーナーであることが多いので 「全責任は私が負う!電柱が高いのも 郵便ポストが赤いのも全部私のせい!!」 その気概を示すためには、CEOというのはなかなか良い名乗りだと思います。 (中には ただの新しもの好きの方もいらっしゃるかもしれませんが)

そんな名刺をいただいたとき 私がいつも心の中に浮かぶのは 「結果責任は全部あなたなのは良いけれど それぞれの業務の執行(実行)にたいする最高責任者はいるのかな〜?」 という疑問です

「ほほー CEOがいらっしゃるのでしたらCOO(最高執行責任者)はいらっしゃるのですか?CFO(最高財務責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)ClO(最高情報責任者)は?」

なんてちょっと意地悪なことを聞いてみたくなっちゃいます

「そんなもん 全部わしじゃい(怒)!」という答えがほぼ確実に返ってきそうなので 声に出してみたことはありませんけどね

筆頭株主であり絶対解任されないオーナー社長様は会社のすべてをひとりで決めることが出来ます最大権力者のオーナー社長こそ「最高経営責任者=CEO」にふさわしい ということについては私も異論はありません

でもこれは裏側から見ると「社長(CEO)が全て決めて 全責任を負わねばならない」ということ

私もそうですが 「何でも得意」という人はめったにいません(私はそれどころか得意なことがほんの少しです)

どんな優秀な社長でも必ず「ここは苦手・・できればやりたくなーい!」という分野があるはずです

しかしながら創業社長であれ 後継社長であれオーナー社長というのはなかなか社員に弱みを見せることができません

なので苦手な経営項目にも「やらなきゃない」とマジメに取り組んだ結果 人並みに出来てしまったりもします(人並みじゃダメなんですけどね)

たとえ人並みに出来てなくても 社員は前述の通り 社長に「ダメですね」なんて言えませんから 「出来ている」と勘違いしてしまうという おめでたいケースもあります(これは私自身にも心当たりがあります)

そんなこんなやっているうちに、本当の中身はそれぞれ違っても、いつの間にかハンマーで叩いても壊れないカッチカチの「万能感チョコ」でコーティングされた、香ばしい中小企業のオーナー社長がバリバリと量産されてしまっているのが 現在の中小企業かいわいの現状ではないでしょうか?

さらに悪いことに この量産された香ばしい社長たちから バリバリと付加価値の低い意思決定が量産されて 組織内にはムダな業務がどんどん増えていきます

その結果 必死に無駄な業務をこなして永遠に成長しない中小企業が量産され 日本の421万企業のうち99.7%を占める中小企業の7割近く赤字決算で運営を続けることで 日本経済全体が生産性や成長性を失っているような気がするのですが いかがでしょうか?

さらにさらに悪いことに こうやって実装された「万能強迫観念」が中小オーナー社長をどんどん孤独に追い込んでいきます

もはや家に帰っても家族から理解もされず 一人ぐいぐい飲む寝酒の量が増えたり 深夜までNETFLIXを見すぎてしまったり XやYouTubeにハマって「〇〇はXXの陰謀!」とかいう風変わりな思想信条をお持ちになってしまう遠因にもなっているんじゃないか?とも思うんです

家にいるのが辛いのか 夜な夜な繁華街に集結し そこでしか通用しない内輪話で盛り上がり 「経済を回す」とか言って 自分のならまあ良いですが 大切な会社のお金をばらまいていらっしゃる猛者連もいますね (これも私自身に心当たりがあります)

まあそれで何でもなければよいのですが 結果的に社長の体調が悪くなったり ますます会社の業績が落ち込んだりしているんだとしたら 「WIN WIN」どころか、日本も会社も、社長も社員もみんな「LOSE LOSE」の「全敗」ですね。

もしかしたら 思い切って会社に社長の分身を1人作ってしまえば、孤独はなくなるかもしれません(そうすすめるコンサルタントも見たことあります)。

しかしその分身さんはぜったい社長の完コピはできませんし 社長を上回ることもありません もしできるような人でしたら もっと良い会社に移るか 自分で事業を起こすか するはずですから

結局その縮小コピーみたいな分身さんに対して社長は時をおかず 不満を持つようになりますし  きっとその分身さんも社長に不信感を抱くでしょう。

そう考えると、このCXO(チーフ〇〇オフィサー)というアメリカで発達した 業務別に責任範囲を明確にした上で組織運営ができる執行役制度をなぞって ただ社長さんがCEOを名乗っているだけなのはあまりにも惜しいと私は考えるわけです

この際ですからご自身ばかりではなく 思い切って会社の役員や管理職にも さまざまなCXO 「最高〇〇責任者」を割り当ててみてはいかがでしょう?

総務部長にはCFO(最高財務責任者) 営業部長にCOO(最高執行責任者) IT周りをやってくれてる幹部社員にはCIO(最高情報責任者) というぐあいに「機能別に社長の分身」を作るんです

もちろん中小企業の役員の数は限られてますから兼任もOK もちろんご自身がお得意な機能についてはCEO自身が兼任されればよいでしょう

そうやって機能別に分かれてできた小さな社長の分身が集まると 合体した巨大ロボみたいに頼もしい「拡張された社長」の完成です

もちろんこの合体巨大ロボのメインコックピットに座るのは CEOであるオーナー社長

最初はテンポが合わず ちょっとぎこちない操縦になってしまうかもしれませんが この決断が中堅大手に成長する中小企業と 永遠に成長しない中小企業を分けるカギになる!かもしれませんよ(笑)

☆これを書くにあたって調べていたら ドラッカーも「経営者は自分のコピーをつくりたがる。上手くいって一回り小さなコピーが出来上がるだけ・・・異質性の中から活力が生まれるということを無視してはならない。」と言っていたようです

2024年7月23日 改訂